支援事例
稼げる農業への第一歩
スポットワーカー×農業の可能性
| 業種 | 農業 |
|---|---|
| 事業内容 | きゅうり・トマト・小松菜・大根・じゃがいもなど、ハウスや露地において多品種を栽培 (農地5か所、合計1ha強) |
| 住所 | 大阪府堺市 |
| 従業員数 | 6名(うちアルバイト5名) |
「堺たちばな農園」を営む橘健一郎氏。就農して10年、農地や出荷先も順調に拡大中。近隣の小学校と連携し農業体験にも積極的に取り組むなど、地域に根差しながら活動しています。多忙を極め、一人で農業を続けていくことに限界を感じた橘氏が取り組んだ、人材確保や受入れの工夫について伺いました。
生産から出荷まで、1人での作業に限界を感じて
人材確保に取り組まれた経緯について教えてください。
農業を始めた当初は、全ての業務を1人で担っていましたが、朝4時から作業を始めて日付が変わることも多く、収穫が追いつかず作物を廃棄せざるを得ないことも増えました。正直、このままでは体がもたないという危機感もありました。以前は農業大学校の学生をアルバイト採用していましたが、その方も就職してしまい、いよいよ本気で考えなければならない時期が来たと思いました。
そこで2024年秋に大阪府農と緑の総合事務所の専門家伴走支援でお世話になっていた社会保険労務士に相談したところ、大阪産業局の採用相談窓口に行けば、人材確保の方法について様々なアドバイスを受けられるから一度訪ねてみてはと助言をいただきました。
募集すれば必ず応募者があることに驚き
大阪産業局の採用戦略アドバイザーへのご相談で、どのようなアドバイスが採用活動に活かされましたか?
まずアドバイザーの方と業務の棚卸しを行いました。その結果、「とにかく人が欲しい」ではなく、「一連の業務を管理する正社員が1名」と、「収穫・袋詰め限定のアルバイトが複数名」必要であると、具体的な人材像を明確にできました。正社員については、農業大学校からの採用・育成がベストであるとして求人票の作成方法をレクチャーいただきました。アルバイトについては、スポットワーカーを活用する方法があり、農業とも親和性が高いとの助言を受け、マッチング事業者から話を聞いてみることにしました。
スポットワーカーのサービスで魅力的だったのは、双方が合意すれば、そのまま直接雇用へ移行できるという点でした。チラシを作って求人をする時間さえも惜しいくらいに忙しかったため、募集から受け入れ後の労務管理や給与支払いまで代行してもらえる手軽さも決め手になりました。
さっそく募集したところ、今まで採用に苦労していたのはなんだったのかと思うくらい、募集をすれば必ず応募してくれる人がいました。現在は、必要な作業を見越して1~2日前に募集し、平均して1日に約3名のワーカーさんに来ていただいています。概ね農業に関心があり、意欲の高い人が集まってくれていると思います。
いかに継続的に働いてもらえるかがカギ
人材の受入れや定着で工夫していることはありますか?
一度来てもらった人にいかに早く慣れてもらい、リピーターになってもらうことがポイントなので、受入れ時の工夫もしています。例えば、初めての方でも収穫のタイミングがすぐにわかるように、「穫れごろの長さを示した棒」を用意し、作業に使ってもらうようにしました。私が一人一人に口頭で仕事を教えるよりも、効率が格段に上がったと感じています。結果、1年弱で延べ人数30名(令和7年9月現在)のワーカーさんに来ていただき、うち3名は直接雇用へ移行できました。直接雇用ができれば人件費のコストもだいぶ抑えられるので助かっています。
広がる6次産業化への夢、儲かる農業へ
さいごに、今後の事業方針についてお聞かせください。
今後さらなるステップアップを図るためには私自身が経営に専念できる体制を整えることが大切だと思っています。そのために、まずは、アドバイスをいただき明確になったとおり、アルバイトへの技術指導や管理を任せられる正社員を採用したいと考えています。農業大学校と連携した採用活動を、今後も継続的に続けていく予定です。
そして、今後は畑をさらに広げ、稲作や6次産業化も視野に入れています。農家が自分たちだけが食べていければよいという考え方から脱却し、雇用して成り立つ農業を実現したいと思っています。事業を広げて1人でも多くの方を採用し、会社員並みの給与を渡せるような、理想の雇用のあり方を追求していきたいと思っています。
公開月:2025.10
